大学受験を成功させるための手段の1つとして、塾や予備校の検討をしている方は多いのではないでしょうか?実際のところ近年の日本における大学受験では合格者のうち約50%がいずれかを利用していて、志望校の入試難易度が上がるほどその比率は大きくなるようです。
今回は、大学受験の中でも高難易度代表格である、医学部受験において、
「塾はいつから入るべきなのか?」
こちらをテーマに、筆者自身の経験を含めた事実ベースで詳しく解説していきたいと思います。
医学部受験に塾や予備校は必要?それぞれの違い
まずは本題に入る前に、医学部受験に関して必要となる前提知識を簡単に整理していきましょう。
【大前提】医学部受験は「難しい」だけでなく「忙しい」
そもそも、医学部の偏差値は65〜72.5(某有名予備校模試基準)と非常に高くなっています。これは、地方の医学部も例外ではなく、「受験戦略として首都圏の超難関医学部をあきらめて、あまり有名でない地方の医学部を受験したけど結局落ちた」といったような話は少なくありません。
加えて、国公立の医学部を目指す場合共通テストで国語・数学・英語・理科2科・社会のように多科目を受験し、総合で8割以上を取ることが必要になってきます。その後、二次試験で医学部専用の英語・数学・理科の問題を解き、さらに面接、小論文試験を経て、医学部合格を手にすることができます。
つまり、ここで押さえておきたいポイントとしては、医学部受験では、高い学力を求められるだけでなく、多様なスケジュールをこなす必要もあるということです。
この「学力+忙しさ」を解消するために、塾や予備校といった学校(高校)以外の追加のサポートが必要になってきます。
塾と予備校の違い
医学部受験の基本を理解した次は、メインテーマに関連する基礎知識として、塾と予備校の違いについて整理していきます。
指導スタイル・カリキュラムが異なる
塾と予備校の一番の違いは、指導スタイルと学習カリキュラムの2つです。
- 塾:個別指導や少人数制を採用しているところが多い。指導スタイルと同様に、個人個人に合わせた学習カリキュラムを組むことができるのが特徴。医学部受験の場合、苦手科目を作らないことが大切になってくるため客観的に得意・不得意モニタリングしてもらえる体制がある塾だと更に良い。
- 予備校:高校のような集団授業が一般的。年間の決まったカリキュラムに沿って進行するため、入校のタイミングが変な時期になると授業が受けられない科目や分野が出てくる。とにかく受験に受かることのみに集中するため、テクニック論など効率よく学習できる。また、設備として自習室を完備していることが多く、その点も塾との違いの1つ。
まとめると、塾はカリキュラムの柔軟性や生徒それぞれの個別対応に優れ、予備校は最初から医学部合格に求められるレベルの授業を受講できる点に強みがあります。言い換えると、塾は入塾した時点で医学部合格の実力がなくても対策を練っていける、一方で予備校は医学部向けのカリキュラムについていけているのであれば合格できる(勝負できる)ということです。
それぞれの講師の質について
講師の質に関しては、会社それぞれで大きくバラつきがあるため一般論としてまとめていきます。
- 塾:医学部出身の講師や現役医大生が指導するケースもあり様々。正社員やアルバイトなどクオリティにもバラつきがあるが、最近では厳しい採用試験を突破した精鋭講師のみが在籍するパターンもある。地方にある個人経営塾だと志望するレベルに対応できないこともあるため事前確認が必須。
- 予備校:基本的には正社員のベテラン講師や有名講師による講義。講師の質は基本的に一定水準以上だが、集団に対して教えるプロであるため、個別のケアを求める場合には満足いかないケースも多い(大量の生徒を相手にするため1個人だけを相手にできない)。夏期講習など長期休暇のタイミングでは、期間限定で予備校生以外の外部向けの講座なども開講している場合が多いので、お試しで受けてみることもオススメ。
基本的に「医学部志望」で、入塾・入校すれば大体はその会社でベテランの講師が担当になることがほとんどです。
学費について
続いては保護者の方は最も気になるコスト面についてまとめました。
- 塾:年間50~150万円+教材費と幅が広く、地域によっても大きく値段が変わってくる。医学部志望で個別指導の場合はさらに高額になることがほとんど。逆に医学部でも他学部と同じ値段の場合はクオリティに注意したほうがよい。
- 予備校:年間80万〜150万円と塾よりは高額なことがほとんど。医学部の場合はさらに高額になることがほとんどで、医学部専門の予備校などは200万近くすることも珍しくない。
改めてまとめると、単に値段だけを比較すると予備校が高額になる傾向があります。ただ、予備校のほとんどは使用する教材が配布されたり、自習室が使えたりと受けられるサービスが多くなります。一方で、塾は予算に関しても個別にコントロールできることが多いので、本当に必要なサービスだけに絞って、余計なコストをかけずに済む利点があります。
医学部受験専門の塾や予備校について
続いては医学部専門塾・予備校について簡単に解説していきます。普通の塾や予備校と異なるポイントをまとめました。
- 医学部に特化しているため、カリキュラムや対策も医学部専用に練りこまれている。
- 有名医学部や癖の強い私立医学部への対策にも強く、合格するためのクオリティの授業やノウハウや分析力は申し分ないレベル。
- 面接や小論文などの対策も強力で情報量も多い。
- コストは塾・予備校の中でもトップクラスに高額。
医学部特化のサポートが受けられる点はメリットですが、とにかく高額な場合がほとんどです。そこに入ったからといって、医学部合格の保証があるわけではないため、入塾する前に自分に合うのかよく吟味する必要があります。
以上が、塾や予備校の違いになります。それぞれにメリット・デメリットはありますが、個人的には普段学校で集団授業を受けている現役生はあえて予備校を選ぶ理由は少ないのではないかと思います。後のセクションで塾を選ぶ利点について詳しく解説しますが、高校でも少なからず受験対策はするため、その補強やペース管理を個別に行える塾の方がコストパフォーマンス的に良い場合が多いです。
医学部受験対策で塾はいつから通い始めるべきか?
では、本記事のメインテーマである、
「医学部受験において塾はいつから入るべきなのか?」
こちらについて詳しく解説していきたいと思います。
ここでは、塾・予備校のうち特に「塾」に関して詳しくまとめていきます。(予備校に共通することも多いので予備校を検討している方も是非参考にしてみてください)
【結論】特に塾は早く通い始めるほど医学部合格の可能性が高まる
早速結論から述べていきますが、医学部を受験するにあたって塾や予備校は早く入るほど良いです。特に利用するサービスとして、塾を検討しているのであればなお更早めの入塾をオススメします。その理由は以下の通り。
- 医学部受験は高1から対策を始めているケースも多く、特に現役合格者ほとんどは高2までに必要な科目全範囲を修学している人が多い
- 塾は個別にペース管理ができるため、既に実力がある受験生はさらにレベルアップでき、一方で実力不足の場合はその穴を克服するサポートができる
- 高校低学年のうちから入塾することで学校のカリキュラムの理解もサポートしてもらえるため受験勉強と学校の試験対策が並行出来て一石二鳥
また、予備校と違って塾の場合はどのタイミングで入塾しても個別にカリキュラムを作成できるため、受講できない科目や分野が出てきにくいです。(時間的に制限がある場合は別)
客観的なデータとして、某有名塾がアンケートを実施したところ、医学部現役合格者のうち約40%以上が「高1〜高2の段階で通塾していた」というデータもあり、早めに学校以外の受験サポートを受ける受験生は多いです。
高校生は塾をどのように活用するべき?
早めの入塾のメリットをご紹介した次に、学年毎に塾の活用方法について解説していきます。
高校1年生
高校受験直後で、中学生の頃からの日常的な学習習慣もまだ残っているため、通塾開始のベストタイミングと言えます。
高1で塾に通う際に意識して欲しいポイントは以下の2つです。
- 国語・数学・英語の実力を強固なものにする
- 全教科先取りで勉強
別の医学部受験コラムで紹介しましたが、現役で医学部合格するためには苦手科目を作らず、特に配点の高い国語・数学・英語で高得点を取ることが重要になってきます。高校低学年の高1では理科や社会は未履修のものが多いため、この主要3教科を中心に高い実力をつけることを意識してください。また、個別カリキュラムを組める塾だからこそ「先取り」を意識したハイペースな学習進捗を心がけましょう。
高校2年生
大学受験を翌年に控えた高校2年生で医学部を目指し入塾するケースも少なくありません。医学部を目指す中では早い方ではないですが、それでもまだまだ現役合格を狙えるタイミングですので、次の事を意識して塾のサポートを活用していきましょう。
- 主要3科目の完成+理科2科目の基本を理解
- 本番レベルの問題に挑戦
基本的な方針は高1と高2で変わりませんが、高1よりも1年間受験までの期間が減っている高2はさらに集中的に国数英の主要3科目の完成に力を入れてください。目安としては、高2終盤の段階で、共通テストの国数英で8割以上取るレベルがあれば実力として十分戦えます。また、並行して理科2科目の基礎知識の習得も行う必要があります。医学部受験に必要な全教科の範囲を高2のうちで終わらせておくことで、高3から落ち着いて本番レベルの対策に打ち込むことができます。
高校3年生
医学部を目指す受験生の中ではやや遅めですが、個別カリキュラムを駆使して効率よく受験勉強を進めるには塾のサポートが欠かせません。限られた時間の中で以下の事を意識してください。
- 苦手分野の洗い出しと克服
- ペース管理や面接・小論文のサポート
とにかく忙しい医学部受験ですが、苦手分野を作らないことは非常に重要です。これまで塾に通ってこなかった学生の場合、学校で履修したきり全然触れていない分野もあるかもしれません。どの科目も高得点が求められる医学部受験では死角を作ることは許されないため、塾講師の客観的な視点から苦手分野を見つけてもらいその克服を最優先に行います。また、面接や小論文など、筆記試験以外のサポートも塾のサポートを最大限に活用して、効率よく対策を進めていきます。
高校3年生こそ塾をオススメしたい理由
前のセクションでは要点のみをまとめたため、ここでは改めて高校3年生に塾をオススメする理由について詳しく解説していきます。
主に以下の3つがポイントになります。
- 高校の学習進度と医学部受験レベルのギャップがあるケースも多い
- 実力に差が出てくる高3で集団指導はサポート不足になりがち
- 現実的な話をしてくれるのは塾
1つ目の、学習進度に関しては特に理科や数Ⅲが高校で遅れがちな科目です。進学校であっても、この2教科は3年の夏を過ぎても未修学なことも多く、医学部を受験する場合は早急に終わらせて応用レベルまでもっていく必要があります。未修学の科目で実力をつけるためには、個別指導のような丁寧な講義をしてくれる形式でなければ難しいです。こうした理由から、2つめに挙げた実力差による集団講義でのサポート不足についても納得がいくかと思います。初めから高い実力を持つ受験生であれば予備校のような一定レベル以上の受験対策講義が有効ですが、それについていけない受験生は取り残されていくばかりです。このような高校3年生だからこそ、個別に相談できる環境のある塾は強くオススメします。
また、3つ目に関しては、残念ながら実力不足で現役が難しい高校生に対して現実的な話をしてくれるのも塾のメリットだと思います。浪人も視野に入れて、絶対に第一志望に合格できるようサポートしてくれるのは、個別に生徒を見ることができる塾だからこそのサービスだと言えます。
浪人は予備校に切り替えるべきタイミング
ここからは、現役生ではなく浪人生の入塾に関して解説します。
結論から述べると、医学部を目指す浪人生は塾ではなく予備校をオススメします。
以下にポイントをまとめました。
- 1年間医学部受験に向けたカリキュラムに取り組むことができる
- 集団授業でモチベーションの維持
- 予備校+塾のダブルの受験生も存在した【経験談】
浪人生に予備校の集団指導をオススメする一番の理由としては、1年間すべて医学部受験対策に使えることが大きな理由です。放課後の限られた時間しか使えない現役生とは異なり、浪人生は学校に通う必要がなく予備校ベースに生活することが可能になります。そのため、浪人生は医学部受験に必要な授業をすべて受講することができるだけでなく、自習室なども利用できるため、学費に対して不足なくサービスを活用することができます。
また、学校と類似した集団での受験対策はモチベーション維持にも役立つため、メンタル面の管理でもオススメです。
3つ目は少数派ですが、予備校で授業や自習室を利用して、学習進捗管理や苦手克服などは別の塾で個別に対応してもらっている浪人生も見たことがあります。確かに、予備校は担任制度やチューター制度はありますが、よりきめ細やかなサポートが欲しい場合は塾との二刀流もアリだと思います。
以上が学年別での塾の活用方法になります。
医学部受験に強い塾・予備校の選び方のポイント
ここからは、実際に塾と予備校どちらが向いているのか、学年別ではなく性格や求めるサービスを軸にご紹介していきます。また、実際に塾や予備校を選ぶ際のポイントについてもまとめました。
塾が向いている医学部受験生
以下のポイントに当てはまる受験生は塾を選ぶのがオススメです。
- 苦手科目を個別に強化したい人
- 学校の学習進度が医学部受験に間に合わない人
- 勉強ペースの管理が必要な人
塾を選ぶべき人の特徴を一言でまとめると、「このままでは医学部に落ちそうな人」です。こうした受験生に共通する特徴として挙げられるのが、上記の3つになります。
どの項目も個別での対応が必要となり、集団指導がメインとなる予備校よりも個別指導中心の塾のサポートが必要とされます。
予備校が向いている医学部受験生
続いては予備校に向いている受験生の特徴を上げていきます。
- 既に医学部受験で戦える実力がある人(目安:C判定以上)
- 3~4月に入校を考えている
- 学習環境が必要な人(浪人生)
予備校は集団に対して一定レベル以上の講義をするため、既に実力を持っている受験生には効率よく勉強ができるのでオススメです。また、タイミングとして3月や4月などは予備校のカリキュラムのスタートになることがほとんどなので、漏れなく講義を受講できます。また、浪人生などは自習室のような学習のための環境が必要になるため、1日中使用できる予備校を選択する方が良いでしょう。
合格実績よりも個別相談できるサポート環境
ここでは、具体的に塾や予備校を選ぶ際に重要なポイントを解説します。
医学部受験において、最も塾・予備校選びで気を付けて欲しいことは、
「合格実績だけで選ばないこと」です。
知っている人は知っている有名な裏話ですが、以下の3点がその理由です。
- 推薦を含む場合や、母集団非開示など詳細が不明
- その会社模試を受けただけでも実績にしていることも
- 特待生として実力のある受験生にオファー
細かい話は割愛しますが、実績=サービスの質ではないことを知っておいてください。
逆に、入塾・入校する際に意識して欲しいポイントは、塾・予備校どちらの場合であっても「個別で相談できる環境があるか」です。
塾に関しては、個別指導がメインになるので、言うまでもありませんが、予備校に関しても、普段は集団指導であっても、定期的に面談などが開催されるところがオススメです。
医学部受験は非常に忙しいため、どんなに優秀な受験生でも進捗管理や苦手分野のモニタリングなどは欠かせません。
授業内容や講師の質は無料体験やカウンセリングで確認できると思いますので、上記のようなポイントを意識ながら検討してみてください。
【番外編】塾や予備校なしでも医学部受験は可能?
最後に番外編として、医学部受験をする際に塾や予備校に通わず「独学」で挑戦できるのかについて解説したいと思います。
独学のメリット・デメリット【結論:完全独学はほぼ無理】
先に結論からお伝えしますが、高校のサポートやオンライン講座、通信添削講座を使用せずに完全な独学の形で医学部に合格するのはほぼ不可能です。
ただし、浪人も視野に入れている方や、前述したオンラインサービスなどを併用する形であれば最終的に合格できるケースもあるので、気になる方は以下の独学に関するメリット・デメリットを参考にしてみてください。
独学メリット
独学で挑む一番のメリットはやはりコストを抑えられることです。また、スケジューリングなどの自己管理能力なども付くため、大学進学後に医師国家試験に向けた対策など、今後に活かせるスキルを磨くことができるのは間違いありません。
独学デメリット
とにかく忙しい医学部受験生が独自で対策していくとなると、その進捗管理だけでも大変です。それに加えて、出題傾向や面接・小論文対策のための情報収集など自分一人でやらなければいけないため、普通の医学部受験生より勉強にあてられる時間も少なくなります。また、長時間のモチベーション維持も必要なため、独学はとにかく困難です。
すべての大学受験において独学を否定するわけではありませんが、医学部受験に関しては独学をオススメできません。
オンライン塾・家庭教師という選択肢
独学での医学部受験はオススメしませんが、だからと言って日本全国どこの受験生でも塾や予備校に通えるわけではありません。
そういった通学するスタイルの塾や予備校以外の選択肢を探している方にオススメなのが、オンライン講座や家庭教師という選択肢です。
特にオンラインでの受験サポートに関しては近年かなりのスピードでクオリティが上がってきており、塾や予備校と併用している受験生も多いです。
やはりこういったサービスを選択する場合でも、理想としては、単に講義をオンデマンドで視聴するだけでなく、ビデオ会議を通じて個別に学習状況や今後のスケジュールなどを相談できる環境があるものを選択しましょう。