医学部受験では推薦やAO入試でない一般入試であっても面接試験が課されます。
共通テストの受験科目も多く、二次試験でも高難度の医学科専用の問題を解かないといけない多忙な中、
「どうやって医学部受験の面接は対策したらいいの?」
といった疑問を持つ受験生は非常に多いです。
特に真面目な受験生ほど、この面接対策に頭を悩ませている傾向が強く、的外れな対策であったり、完全にやりすぎて筆記試験に影響が出てしまうケースも時々見られます。
そこで今回は、医学部受験の面接試験対策について徹底解説していきます。
実際に医学部受験の面接で出題されたリアルな情報のみをもとに、合格するためのノウハウや、よくある失敗などを具体的にまとめました。
医学部受験の面接について
まず初めに、医学部受験における面接の役割(意義)に関して簡単に見ていきましょう。
細かい目的は受験する大学によって異なりますが、ここをきちんと押さえておかなければ単なる自分語りの面接になってしまい折角の準備が台無しになってしまいます。
医師としてふさわしい人物かをみている
結論から述べると、医学部受験の面接は、「医師としてふさわしい人物か?」を見極めるために課されるといわれています。
ですが、受験生側からすると何を持って「医師としてふさわしい」とされるのか、疑問に思うかもしれません。
もう少し具体的に解説していきます。主に以下に挙げられる項目が医学部の面接では重視されます。
- コミュニケーション能力
- 倫理観や責任感、協調性
- 医師としての使命感や熱意、真剣さ
- 患者や社会に医師としてどのように貢献したいか
上記に挙げた項目は、近年の日本における医療業界の「チーム医療」というテーマについて知っている方であれば想像しやすい項目だと思います。簡単に説明すると、「全職種協力して医療サービスを提供しましょうね」といった考え方で、大学病院など大きな病院ほど積極的に取り組んでいる医療体制になります。これは医師も例外ではなく、多職種と連携を取れる人材に需要が高くなります。そのため、上記に挙げたような項目が医学部受験の面接では重視されるというわけです。
面接形式は3つ
医学部受験の面接で重要なポイントの次は具体的な面接形式についてみていきましょう。
個人面接
いわゆる一般的な面接試験の形式です。
医学部受験の場合は、1対1ではなく、受験生1人に対して面接官3人程度つくことが一般的です。3人それぞれには役割があることが多く、1人は進行役、もう1人は普通の質問、もう1人は厳しい質問(矛盾を指摘するような質問)をする場合が多いです。これらの役割分担に関して、受験生の間では優しい面接官と怖い面接官のように言われることも多いです。
質問内容に関しては後のセクションで詳しく言及しますが、志望動機や自己PRなど受験生の人となりを見ることがメインの面接形式です。
集団面接
集団面接では、複数の受験生が同時に面接官からの質問を受けます。
自然と他の受験生との比較が入ってくるため、印象付けなど多少のテクニックが必要とされる面接形式です。また、協調性やマナーも評価対象になることが多いため、あまりに自己中心的なふるまいをしてしまうと大幅に原点になることもあります。
グループ討論
集団形式の面接と組み合わせて実施されることも多い面接で、受験生数人がグループを作ってテーマについて話し合う形式です。
受験生自身のプロファイルではなく、思考や集団の中でのふるまい方、傾聴力などを重視しています。実際の討論のテーマとしては、医療や社会問題などのテーマが多く受験する大学の過去問から傾向をつかめることが多いです。
いずれの面接形式であっても、医師としてふさわしい人間かを見極めるための試験であることに変わりはなく、テクニカルな返しやインパクトのある話よりも上記に挙げた項目をいかに多く満たすことができるかが合格のカギになります。
【実体験】医学部面接で実際によく聞かれる質問と回答のコツ
このセクションでは、実際に医学部受験の面接で聞かれた質問と、それに対する回答のポイントをまとめていきます。
志望理由・本学を選んだ理由
医学部に限らずほぼすべての受験生が面接を受ける際に準備する質問です。この質問に対する回答は加点を狙いに行くものではなく、減点を防ぐために必須で解答を準備する必要があります。
医師になりたい理由を誠実に伝えることが重要で、ドラマのある医師を目指したキッカケや崇高な目標を無理に作り出す必要はありません。回答は以下の3ポイントを軸に考えると答えやすくなります。
- 医師としてどのように働きたいか
- その大学にした理由(偏差値など以外)
- 医師になるために大学で頑張りたいこと
これから医学部に入る受験生の場合は、まずは医学部生としてどのようなことをしたいのかをメインに話すとリアリティが出てくるのでお勧めです。
自己PR・長所や短所
こちらも面接では定番の質問になります。短い面接試験の間に「この受験生はどのような人なのか」を見るために聞かれる質問で、この質問をきっかけに色々な質問に派生していくことが多いです。回答のポイントとしては以下の通りです。
- 具体的なエピソードを基に自分の長所を話す
- 短所は本当に悪いところというよりは人によっては短所にみえるくらいのもの
- 特別な経験がある場合はそれも交えて話すと良い
面接をスムーズに進めるためのキッカケづくりの質問になるため、自分自身が話しやすいテーマをベースに準備することがポイントです。
休みの日は何してる?(趣味)
この質問は注意が必要です。一見、自己PRの延長の質問の様ですが、多くの場合「ストレスマネジメント(ストレスコントロール)」の手段を持っているかどうかを見極めようとしている質問になります。医学部を頑張って卒業しても、実際に現場に出た際にストレスでつぶれてしまう人材ではないか、うまくストレス発散ができるかを聞かれることは医療従事者の就職面接でもよくある質問になります。
- ストレス発散につながる趣味(スポーツ、旅行、アウトドアなど)
- 実際に受験勉強でできていなくても昔やっていた趣味などでもよい
- 深堀されてまずいものは避ける
本来趣味に差別があってはいけませんが、どうしても面接向きの趣味とそうでない趣味はあります。上記の3項目を満たす趣味を回答として用意するのがオススメです。
理想の医師像
志望動機と合わせて答えることも多い質問です。本格的な医学部受験向けの質問になってくるのでしっかりとした準備が必要です。あまりに具体的すぎる解答では薄っぺらく聞こえてしまうため、そのバランスが難しい質問でもあります。回答を考えるポイントは以下の3つです。
- どんな性格の医師になりたいかを考える
- 患者との関係、他の職種との関わり方を述べる
- 理想の医師像に近づくにはどうしたらいいと思うのかを述べる
間違いではありませんが、「凄腕の脳外科医になります」のように唐突に偏ったポイントのみを具体化した回答を準備する受験生がいます。このような回答は最初から深いところを責めすぎです。まずは目指す医師がどのような人なのか性格の部分に触れたのち、さらに細かく質問された際に、より具体化した回答をするのがオススメです。簡単な例として以下のような回答を用意してみました。
例:緊急時に冷静な判断を下せる医師になりたい→救急現場で活躍したい→そのためには豊富な臨床判断をするための知識と経験、多職種との連携が必要→実際に処置をするための優れた技術を身に着けたい
浪人理由
浪人生はほぼ確実に聞かれる質問です。履歴書は願書で提出しているので、いかなる理由でも正直に答えるしかありません。この質問にはメリットもあり、「浪人してでも医師になりたい」とアピールできる浪人生特権の質問でもあります。回答は以下のポイントを押さえて準備するのがオススメです。
- なぜ浪人したのかを正直に
- 浪人期間に成長したことや努力した点をアピール
- 浪人してでも医学部にこだわった理由
チーム医療について
近年の医療業界の動きを考えると、最も重要なテーマの1つであることに間違いありません。チーム医療に関しては、基本的なことを知識として入れ、そのうえで回答を準備する必要があります。事前学習が必要やタイプの質問ですが、正解が決まっているタイプの質問でもあります。重要なポイントを3つまとめているので、学習の際にもこれらを意識しながら自分なりの解釈を考えてみましょう。
- なぜチーム医療が重要になってきているのか
- 他職種との連携やコミュニケーションの大切さ
- 医師のタスクシフトについて、またそれらに対する考え
チーム医療に関しては、医師の場合はこれまで医師が行っていた仕事(タスク)を他職種に移行していることが多いです。そうすることのメリットやデメリット、それらに対する考え方が個人個人異なる回答になるので自分なりの意見を持っておくのがオススメです。
地域医療について(地方国公立)
医療系の社会問題の中で、最も頻繁に取り上げられる問題の一つです。具体的には僻地の医師不足について聞かれることが多く、少ないながらもどのように地域で連携を取って良質な医療サービスを届けるか考えを述べることが重要な質問です。受験する大学の立地によって微妙に置かれている状況が異なってくるので、その大学の属する地域の医療に関するリサーチが重要になってきます。
- 地方医療の現状や課題を把握しているか確認される
- 地域医療への貢献意欲を話す
- 地元の大学志望の場合は地域との関わりを強調するとリアリティがでる
基本的には地方の場合、大学側は卒業後その地域に残って働いて欲しいと考えているので、その点は積極的に言及した方が良いです。
医療に関するニュース
医療業界に関心があるかをチェックする質問です。定番のものを1つ、マニアックなものを1つ合計2つしっかりと事前準備しましょう。時事的な話題が中心なのでテーマの選定タイミングにもよりますが下記のポイントを意識して準備するのがオススメです。
- 新薬などは適応となる病気についても聞かれるので準備が必須
- 志望する科がある場合は関連した話題が良い
- 医療過誤のようなネガティブな話題は避ける
筆者は、過去にワクチン開発の話題を面接で回答したことがありますがその際「その病気ってどんな病気か知ってる?」と深堀されました。ワクチンについてはどこがすごくて、これを利用してどんなメリットや影響があるのか調べていましたが、適応となる病気については一般的なレベルでしか答えられませんでした。面接官は基本的に医師免許をもつ教授なので、病気に関しては学生がどこまで勉強しているか興味があるためアピールできるよう準備をしておきましょう。また、医療ニュースの中でも医療過誤について言及するのはあまりお勧めしません。ネガティブな話題は話の入りは簡単ですが、根本の解決策や問題点を述べる際、現場経験のない学生は夢物語な発想で終わることがほとんどだからです。
高校時代の経験や学び
「高校時代勉強以外に何を頑張りましたか?」も定番の質問です。仮に勉強の選択肢をあらかじめ潰されていない場合でも、勉強以外の話題がオススメです。質問の意図としては、集団での人間関係の構築やリーダーシップ、努力した経験などに焦点が当てられている場合が多いです。回答に対する話題のポイントを以下のようにまとめました。
- 部活動やボランティアが定番
- 継続したことがオススメ
- 受験勉強以外の資格取得の勉強ならOK
部活動のように継続して何か取り組んできたことがあればベストです。部活に入っていない場合は、大学入試とは関係のない資格試験の勉強や、高校で挑戦したかったけどできなかったことを、「入試が終わったらやってみたいこと」として答えるのでも良いでしょう。
最近読んだ本
筆者の経験から、「読んだ本」についてはどの大学の面接試験でも聞かれました。ですので、普段あまり本を読まないような受験生でも面接試験前に下記のポイントを押さえた本を2冊くらいは読んで準備するのがオススメです。どうしても本を読むのが苦手という場合は、アマゾンの提供しているオーディブルというサービスで本を「聴く」こともできるので苦手な場合はそちらで対策してみるのも良いです。
- 医療関連の本1つと自己啓発1つ
- 必ず読んだ本について自分の考えをまとめる
- AI×医療は教授も関心がある確率が高い
医療関連の本だけでは準備してきた感が出てしまうので、自己啓発やビジネス書のような本も別で読んでおくと良いです。特に最近ではAI業界が目覚ましい発展をしてきており、医療業界でも話題に上がることが多いです。こうした分野に関連する本は、面接官の教授自身も興味があるため、読む本に悩んだ場合は是非選択してみてください。参考までに、下記におすすめの本2冊のリンクを貼っておきます。
以上の質問が、実際に筆者が医学部受験の面接で聞かれた質問になります。他にも細かい質問はありましたが、すべてを対策に取り入れていては時間がありません。マストで押さえておくのは上記の質問程度におさえ、あとは過去問などをベースに必要最小限のコストで対策してみてください。
医学部受験の面接で押さえるべきマナー
ここでは、医学部の面接試験のマナーについても簡単にまとめました。
基本的なことになるので簡単に目を通す程度で大丈夫かと思いますが、NGワードなどは時々使用してしまう受験生もいるので事前にチェックしておくのが良いかもしれません。
服装・持ち物
現役生は制服、浪人生は一般的なスーツ、かばんは派手でなければ普段の鞄でも大丈夫です。
話し方や態度のポイント
完璧な敬語で話すことは難しいですが、丁寧に答えようとする姿勢は必要です。
NGワード
一部うっかり使ってしまうNGワードがあるので下記をチェックしおいてください。また、NGではないけどできれば他の表現が良いワードも載せています。
- 医者 → 医師
- 治す → 治療する
- お金が稼げる → 経済的に安定した
- 人助けがしたい → 患者さんの生活を支えたい
- 医療ミスをなくしたい → 安全で質の高い医療を提供したい
- 病気を治す → 患者さんのQOLを向上させたい
- とりあえず → まずは / 初めに
- 親 → 母、父、両親
- 患者 → 患者さん(患者様はあまり医療従事者は使わない)
上記はたまに使用している学生がいるため注意が必要です。
面接対策の具体的な方法
このセクションでは医学部の面接試験対策について解説していきます。
高校3年の夏休み明けから始めよう
実際に面接試験で回答をする練習を始めるのは、高校3年生の夏休み明けからで十分です(浪人生であればその夏)。ただし、冒頭のセクションで挙げた質問の中の「読んだ本」や「チーム医療について」などのように、知識として準備が必要なものは空き時間にコツコツ用意しておと慌てなくてすみます。
自己分析は必須
また、面接練習を実際に始める前に自己分析は丁寧に行いましょう。どのようなポイントを押さえるべきかリスト化してまとめました。
- 自分の強み・弱みを明確に
- 医師になりたい医師像や大学の志望理由を言語化する
- 人と違う経験はないか考える
これらの自己分析は一人でやってもあまり深堀出来ないため、食事中にでも家族や友人と話しながら考えるのがオススメです。
過去問や定番質問の模擬回答練習
実際に面接の回答練習をする際は、まずはこの記事の冒頭にあげた定番質問を答えられるようにしましょう。
そのうえで、本番同様に過去問を初見で答える練習をし、その後フィードバックをもらいながら再度練習していきます。
時々、過去問を眺めるだけで、声に出して練習しない受験生がいますが、高確率で失敗する方法なので必ず対人で練習しましょう。
面接対策だけでも塾や予備校のサービスを使うのがオススメ
現役生であれば高校の教員や友人と練習が一般的かもしれませんが、個人的には現役生も浪人生も面接の練習には塾や予備校といったサービスの利用をオススメします。理由は主に以下の通りです。
- 知り合い(教員・友人)では適切な練習ができない
- 塾や予備校は受験用面接に特化した練習ができる
- 集団や討論なども練習できる
一番の理由は、塾や予備校は受験面接専門に対策ができるという点です。
細かい話は割愛しますが、高校の場合はマナーに重きを置く傾向が強くどちらかというと就活用のような面接対策に偏りがちです。一方で受験に合格することをメインにサービスを提供している塾や予備校であれば、受かるためのノウハウや、各大学の分析データがあるため非常に効率的に対策を行うことができます。特に塾などは面接対策用のコースなども開設していることがあるため積極的に利用するのがオススメです。
【実例】医学部面接でよくある失敗
最後に医学部受験の面接でよくある失敗についてまとめました。
これは実際に筆者も経験した事例になります。皆さんは同じようなミスをしないよう是非反面教師として参考にしてください。
【よくある失敗】志望動機(きっかけ)をドラマチックにしすぎ
これは私以外にも非常によくあるパターンです。
自己流の強い教師や塾講師などに面接対策であたってしまうと、「この医師を目指したきっかけは弱いな」や「何か医療機関にお世話になった経験とかはないの?」などインパクトのある話題を求められます。しかし、多くの学生は健康で、過去に大病で命を救われたなんて話は少数派です。多少の脚色は自由ですが、深堀するのはそこではなく、今後医学部で何を学び、どんな医師になりたいかをきちんとまとめるようにしましょう。
実際筆者自身も、ただの風邪でお世話になった先生の話をオーバーな感じで話ましたが、面接官は何の関心もなく次の質問に流れました。
趣味を適当に答えたら突っ込まれた
逆に適当に答えてはいけない質問で安直な回答をして失敗した実例もあります。
自己紹介の後に流れで「趣味はなに?」と聞かれたので、当時勉強で忙しかった筆者は無難に「読書」と答えてしまいました。2,3冊は面接対策用で読んでいましたが、「月にどれくらい読むの?」「どんな本をよく読むの?」「最近読んだ本は?」「趣味っていう割に読む量少なくない?」など、どんどん深堀されてしまい悪い印象を与える結果で終わりました。皆さんは趣味を聞かれた場合は、具体的に話せる内容のものを考えておくのがオススメです。
圧迫に無理に対抗しようとした
面接官の中にはあえて否定的な意見ばかりを言い、圧迫面接を行うパターンもあります。基本的には言葉の通り圧力をかけるのが目的なため、正論で返しても上げ足を取られて続きます。私の失敗談としては、「これは自分の意見をはっきり言えるか試されているな」と勘違いをしてしまい、面接官のそうした質問にさらに「否定」の形で答えてしまい最終的に冗長な受け答えになった経験があります。
オススメの対処法としては、「相手の意見を受け入れること」です。
「確かにそういった考え方もありますね。」「そこまで想定ができていませんでした。」など、自分の意見以外のものとして否定せず傾聴する姿勢を示すのが一番無難です。
あまりない話ですが、ディベートのように相手を負かそうと向きになるのはNGです。
グループ討論で自分ばかり喋りすぎた
これは面接練習の段階で指摘された失敗になります。
「意見を言えて、討論を進めるリーダーシップがあるのは良いけど、それよりも自分ばかりアピールしたいように見えるよ。」
当時塾でグループ討論を見てもらっていた講師からのフィードバックです。
このグループ討論では、いかに素晴らしい意見を述べるかということよりも、他の受験生との関わり方を重視していることが多いです。全く発言をしなかったり、自分の意見を持たないことは問題ですが、基本的には「他の受験生と同じ量」で回答することを心がけましょう。
以上が医学部受験の面接に関するリアルな情報でした。
医学部の面接は特別な技術を発揮しないといけないようなものではありません。必要な準備を丁寧にしたうえで挑めば、これが原因で落とされることはほとんどないので落ち着いて対策をしてみてください。
