指導記録89

<1月5日(土)>   集中力


「どうだ?直前の心境は?」と聞けば、「そうですね。ちょっと浮き足だってますね。」と答え
が返って来た。この浮き足だった状況で(追い込まれた状況)でどれだけ当日爆発できるか
どうかだ。大体、現役生は間に合わせようと必死であるから浮き足立つ暇がない。だから
当日浪人生に勝ったりするのだと思う。勉強してなかった体育会系の生徒が強いのは、
試合に向けてコンディション創りに成功した場合もあれば、失敗した場合もあるからだと
思う。以前、甲子園球児を指導したことがあるが、さすがに集中力はあったと思う。
予備校にプロレスラーの卵がいたり、高校時代の藤原紀香がちょっとだけいたなんて聞
いたこともある。(ちなみに女優の沢口靖子の高校時代は南海電車のシンデレラと言わ
れる位有名だったらしい。俳優の赤井英和の恐れられている噂も相当有名だったらしい。)
「集中力の差」の良い例が、全日本ラグビー選手権で社会人NO1と大学日本一が激突
すると思う。その勝者の歴史を振り返ると圧倒的に社会人の方が強い。
おそらく社会人は大学生よりも練習時間は少ないはずである。
その少ない練習量の中で「差」が出るのは集中力の差ではないだろうか?


わたし自身の例を上げれば中学高校と柔道部だった。
中学は柔道部主将でサッカーのフォワード(反則退場専門のフォワード)もやっていた。
高校は柔道部の副主将だったが、よく警察署の中にある警察道場に練習に行っていた。
ばりばりに練習していたので最初は「ポリ公ごときに負けるわけがない、第一練習量が
違う!」と生意気に思っていた。
本物の警察と対戦できると思って最初は喜んでいたことを覚えている。
また、前日、プロの警察官を投げている自分を想像してニヤニヤしていた。
また、警察官達が練習前にタバコを吸っているのを見て「けしからんポリ
公や、見とれや!」とか思っていたと思う。
しかし、実際にやって見てとんでもない衝撃を受けることになる。
柔道は不思議なもので組んだ瞬間に「あっ!負けるな、投げられるな」とわかるものだ。
相手が強ければ強いほど早い段階に肌感覚でわかる。
警察官にはただの1度も勝つことはできなかった。
有効1回位取れただけだった。
もし、不良にかぶれている生徒が見ていたら忠告しておこう。
「警察官はめちゃくちゃ強い、だから逆らうな!おとなしく何でも自首しなさい」と 
ちなみにその警察より上の政治家なんかのボディガードをしているスーツを着たSP
(政治家の講演会なんかで後ろに左右に2人位たっている屈強な男達)
なんかは空手の先輩がやっていたが、更に天文学的に強い。
(先輩の中には企業の社長のプライベートボディガードを月に30万円でやっていた人もいた。
仕事は、車の運転とボディガードである。)
たぶん、逆らうと「まばたきをする瞬間」に病院送りにされると思う。
今なら手も足も出なかった理由はわかる。警察官は当時高校生の「へたれの私」より、常
に緊張して現場での集中力が研ぎ澄まされていたからだと思う。
「かける技が全て読まれている」し、反則だと思うのだが、背負い投げに入る瞬間に一瞬、
カウンターで膝蹴りを合わせて来られた時に「こいつら本物や〜!」と思った。
(警察官の現場での犯人逮捕術の一つだと今なら分析する。意図的な反則ではなく、職業柄
自然に警察官が反応したのだと思う。カウンター攻撃は最大のダメージを与えるものだ。)
そこから最後まで投げられ放題だった。
そして、あれだけの練習をした後にまた再びタバコを吸っているのだ。
「ぼうや、十年早いよ」と言われているようだった。
つまり、「本当に効果のある限界まで集中した時間だけが栄養になる」
そして「その積み重ねがいざという時の不動心を産む」のだと思う。
書きながら当時を思い出した。
明日から警察官を見かけたら「お疲れさまです。ご苦労さまです」と言おう。

意外なことかも知れないが、柔道とか空手を始める子供は「元いじめらっれこ」
が多い。「いじめられた経験」と「いじめられた自分が許せない」とか2つの
感情を同時に持っているものだ。そしてコツコツ努力する。
性格も単純そのものだ。
私も中学から柔道を始めたのは、「学校で最も権力がありそうなクラブ」だったから入った。
「できるだけ早くえらそうにしたい」という理由だけだった。

もう一つこの世界には「最初から天才」もいる。ただし、練習嫌いである。先輩にすごい
人がいた。この先輩、目の前で「腕立て1000回」やったのはびっくりした。翌日、腕が
腫れて休んだが、非常にかっこよかった。
この先輩の弟がまた「天才」だった。背負い投げで投げられても「ブリッジで支えて背中を
つけない」のだ。信じられない位の猫のような反射神経の持ち主だった。
もともとの天才っているんだなと思った。天才のDNAってあるんやと思っていた。
でも兄弟2人とも地味なおもしろくない練習はしない。
一定の所までは急激に伸びるがそこで止まる。
才能だけで試合に出ていた。


こういう先輩を見ていただけに柔道を始めた時に毎日、「受け身」の練習がいやでいやで
仕方なかった。冬は畳が凍っているため、手や背中が痛いのである。
いやいややっているのが顧問にばれて、ある日訓話を聞かされた。
(投げられるか殴られるかどちらかだろうと緊張して顧問の前に行った)

「おい、お前受け身は何のためにあるかわかるか?」と

「いいか、ビルの8階から落ちたら即死や、でも受け身を知っていたら救急車で済む。
それが受け身や!」と

当時はそれを聞いて完全に納得する位単純だった。

 

【謙虚さと素直さの重要性(自らの反省記録)】

これも反省だが、中学や高校時代は生意気で仕方なかった。そのためしなくてもい
い遠廻りをしていた。
高校の柔道の県大会ではみんな必死でコンディション調整する。例えば、
選手なら試合と試合の前や間なんかは「バナナ」か「スポーツ食品」で消化の良いもの
だけを口にするだろう。私は試合と試合の間も「甘ったるい缶コーヒーのジョージア」を飲んで
いた。今、考えても自分で損をしない限り、理解できない馬鹿だったと思う。


空手の試合でも調子に乗って1度中量級に階級を上げて75kg制限までのクラスに
エントリーしたことがある。第7回全関西ウェイト制大会だったと思う。
今考えるとほとんど自殺行為である。
普段80kgの選手が5kg減量して出て来るのに60kg台の人間が出るということは
20kgの「差」である。20kgnの差がパンチや蹴りに乗って来るのにである。
おまけに体重を上げるのに前日に焼肉食って試合の直前にたらふく「ごはん」を押
しこんでおまけにユンケルの最も高い金額のものを飲んで出るという信じられないこ
とをしていた。普通は焼肉など消化に時間がかかるものなど前日に絶対食べない。
なめていたからだと思う。

または「俺ならなんとかなる」とか思っていたからだと思う。(自信過剰なのか馬鹿な
のかプライドの高いやつは当たり前にこんなことを考えるから始末が悪い。第一人
の話を聞いていないのだから明らかにわかる展開が全く見えていない。)

 

当然のごとくボディを徹底的にきめられ、女子トイレで吐きまくったことがある。意識
もうろうで男女のトイレの区別がつかなかったというのが本当だった。本当に痛い思
いをして損して初めてわかる愚か物人間だった。たしか女子トイレで汚物を口から
流しながら寝ていたと思う。
完全に破壊された。この時の全身の痛みは約20年経っても今だに覚えている。
ここまで破壊されてやっとわかるのだから自分が本当にいやになる。

 

しかし、警察に通報されずに良かったと思う。というより40分以上自分が吐いた
汚物にまみれて寝ていたのだから、たぶんドアを開けた人がすべて逃げていった
のだと推測する。あるいは、変質者と間違われたか?は今だに不明である。
(トイレのドアを開けたら空手着を着て更に口から汚物を大量にたれ流して倒れて
いる人間がいたら普通は逃げるだろう。)

「生意気な性格」というものは本当にこわい。
この天罰を受けてから「科学的トレーニングの重要性、コンディション調整の大切さ」
にやっと気がついた。
もともと素直で謙虚だったら上記のような馬鹿なことはしないだろう。


それから食生活や規則正しい生活を目標達成のために大切に思い始めた。
受験生の中にも生意気で人の話を聞かない生徒もいるが、聞く準備ができてない限り
遠廻りをするだろう。また私もその聞けない気持ちもよくわかる。


性格を変えるのは大変なことだ。 大体聞いているようで聞いていない。
もし、保護者の方が読んでいて自分の子供が「生意気かプライドが高すぎて困る」という
方であれば、本人が徹底的に「どん底」に落ちないとわからないと言える。
それ位難しい。(自分が子供を持つまで子育ての大変さが理解できないのと同じ)

傷つき→気づき→築く(新たなものを再構築する)

にはとてつもない時間がかかる
それをどれだけ早く気づかせるかが問題だ。
生意気だった人間が言うから間違いない。
ただし、そこから失敗を教訓にして「深く考え始めるようになった人間」
の成長はものすごく早いと思う。

 

PS:東京のN様へ

  数学CのDVDは複数人で見て内容チェックをかけるのですが、22日から試験ですね。
  今回のCは医大に絞ったものではなく国立京都大や私立の早稲田などの問題も入って
  います。Cの問題として適したもので製作されています。できるだけ早急に送ります。