小論文プレテストPART3

小論文 プレテストβ
試験日〔 〕 フェニックス・ゼミ 

 次の課題文を読んで問に答えなさい。解答は所定の欄に記入しなさい。

 

[課題文] 

 近年における科学技術の進展にはめざましいものがあるが、その一つに、遺伝情報の解明とそれに基づいた医学の発展が指摘できる。人間社会に寄与するプラスの側面としては次のような諸点がこれまで指摘されてきた。

 遺伝子上の情報にはさまざまなものがあり、そのなかには種々の疾病にかんする情報も含まれている。このような遺伝子を疾病関連遺伝子という。こうした遺伝子はそれだけで疾病をひきおこすものは少なく、多くの場合個体をとりまく環境との相互関係において疾病を惹起していると考えられている。各個人が自らの遺伝情報を知れば、疾病の可能性や、場合によってはその蓋然性の大きさについても推測できるので、遺伝情報が各個人にとって有益な情報たりうることは事実である。将来、ある疾病の発症可能性がわかれば、それにたいして何らかの手を打つことはできるかもしれない。生活習慣の改善によって発症を防止したりあるいは遅らせたりすることは可能であろう。転ばぬ先の杖ということわざのとおりである。もちろん、なんらかの理由から自分の遺伝情報を知りたくない人はいるであろう。そのような人は、遺伝情報を求めなければよいのである。

 また、出産をひかえた母親がなんらかの疾病関連遺伝子を有した子を宿したとき、両親が疾病の発病を恐れ、妊娠中絶の道をとることも十分に考えられる。子供が幸福な人生を歩むのは誰もが望むところであり、逆に子供が非常に困難な疾病を抱え込むことはどんな親にとっても心配である。したがって、遺伝子診断の結果として両親が出産をひかえたとしても、そのこと自体は理解できる行動である。配偶者を選ぶ時にも遺伝情報が使われるとすれば、その動機は出産前の遺伝子チェックの場合と重なり合う部分がある。いままでも近親婚を避けるなどの配慮はあったので、婚姻にさいしての遺伝子のチェックはまったく新しいことではなく、その延長線上にあると考えることも可能である。

 さらに、遺伝情報は、生命保険や各種疾病にかんする保険に利用される可能性をも有している。現在では加入前の審査は主として既往症の有無などによって行われているが、これからは加入にさいして各種の遺伝情報の提示が求められていくかもしれない。保険会社は、各個体の疾病関連遺伝子を知り、当該個人の疾病発生のリスクを計算することができる。各個人の行動様式や個体としての特性にあわせて保険を設計することを細分化保険という。たとえば、喫煙者と非喫煙者との差はそれぞれの行動様式の違いとして理解することができる。このような場合には、喫煙者にたいしては肺がんなどの疾病の可能性が高いと考え、非喫煙者に比べて高い保険料を課すことが考えられる。遺伝情報の獲得はこのような細分化保険への道をつけることにもなろう。保険会社の立場からすれば、各主体が負っているリスクの大小に応じた保険にすることができるので、リスクが小さい主体にたいして過大な保険料を課す必要がなくなる。いままでは、小さいリスクの持ち主が大きいリスクの持ち主にたいして相対的には保険料を払いすぎていたともいえるのである。遺伝子診断を利用した細分化保険が導入されれば、個別主体のリスクに応じた保険料の徴収が可能になる。

 このように、遺伝子診断によって、私たち個体の将来についてよりいっそう詳細な情報が得られるようになることは、科学的知見の大きな飛躍である。とくに、遺伝子診断が遺伝子治療にまで進めば、人間が自らの英知によって身体面にかかわるわずらいから自由になるのも時間の問題であるように考えられる。これは、たしかに劇的な科学観の変化だといえよう。

 

[設 問] 

問 課題文では、遺伝子診断が人間社会に大きく貢献することが三つの事例によって主張されています。

@ しかし、これとは逆に、科学の力によって遺伝情報が明らかになることから生ずる問題もあると考えられます。三つの事例の中から一つを選び、課題文の主張にたいして説得的な反論を加えなさい。その上で、そうした問題を解決するのにどのような対策を社会的に講ずることが望ましいのかを模索しなさい。解答欄Aに600字以内でまとめなさい。

 

A さらに、@にたいするあなたの解答のうち、課題文への反論部分を解答欄Bに40字以内で要約しなさい。

   

小論文プレテストPART2

 小論文 プレテストβ
フェニックス・ゼミ 

問 次の文を読み、あとの設問に答えなさい。

 

 学問を職業としてきたから、先達が書いたものをいろいろ読んで勉強するのは仕事のうちだ。勉強して、疑問にぶつかり、そのつど自分なりに一生懸命考えて、結論めいたものに到達する。到達しなくてもあきらめない。いつかわかる日が来るかもしれないから、すっきりしなくても何でも、疑問は疑問のまま残しておく。専門分野から日常的なことまで、僕にとってものを考えるとは、そういうことである。

 こうやって長年考えてきたことを、本に書いたり、講演などで話したりする際、言葉ひとつにも、かなり気を遣ってきた。一般の人にわかりやすくしようというより、自分で納得のいかない言葉は使いたくないからだ。特にカタカナ語。たとえば「コミュニケーション」である。僕に言わせれば、これほど怪しい言葉もない。人がふたりいて会話しているイメージだが、このふたりはコミュニケーションによって、どこまでわかり合えるのだろうか。お互いに相手の言葉によって、考えや気持ちは刻々と変わるはずだ。お天気の話で終わるならともかく、一方がついうっかり「バカ」なんて言おうものなら、話の流れによってはゲンコツが飛んでくるだろう。相手が変わってしまったら、話はそこまで。コミュニケーションどころではなくなる。

 コミュニケーションという言葉は、アメリカ人がよく使う。彼らは確固とした「不動の自己」というものを信じているから、軽い言葉のやりとりでもコミュニケーションが成り立つ。そんなイメージでこの言葉をとらえているのではないだろうか。だが僕は、確固とした自己なんてそもそも存在しないと思っている。片時も同じ状態にとどまらないのが生き物の仕組みであり、人間の脳なのだ。

 カタカナ語は好きではないが、日本語の語彙の中に適切な訳語がない場合は、そのまま使うしかない。「サイズ」がいい例だ。メートル法の時代に「寸法」では古くさいし、「大きさ」というと、すでに「大きい」という価値観が入っている。「小さい虫の大きさ」では、会話の中でならまだいいが、文章では違和感がある。「システム」「グループ」なども、そんな言葉の中に入るであろう。

 自分が納得できるように、つくってしまった言い方もある。よく使うのが「ああすれば、こうなる」。脳化社会にどっぷり浸かった人間が陥りがちな、硬直したシミュレーション思考のことを、こう表現してみた。自分の考えを伝えるには、ふだん使い慣れている言葉を使ったほうが、本人も心地いいし、人にもわかってもらいやすいようだ。

(養老孟司「旅する脳」による)

 

問 あなたにとって納得できない言葉とは、どういう言葉ですか。例をあげながら、その理由を説明しなさい。ただし、本文に出てくる例は使わないこと。(六〇〇字以内)

小論文プレテストPART1

  小論文 プレテストα
フェニックス・ゼミ   

問 次の[課題文]を読んで、以下の問に答えなさい。解答は所定の欄に横書きで記入しなさい。

 

[課題文] 

 インターネットの利用者は年々増加を続けている。情報通信白書によれば、平成15年末の利用人口は7730万人であり、人口普及率は60パーセントを超えている。また、世帯普及率も平成15年末において9割に迫る勢いをみせている。これほどインターネットが普及したのには、インターネットにより、情報交換や情報収集が低コストで迅速かつ容易に行うことができるようになったため、他の媒体を通じて行われてきた通信や各種取引の多くがインターネットに代替され、インターネットが生活必需品となりつつあるという背景がある。

 インターネットの普及により、人間と人間との関係、そして人間と社会との関係に多種多様な変化がもたらされてきた。その変化にはインターネットのもついくつかの特性が関わっている。その1つとして、人々はネットワーク上で自らの知識や経験を伝え、そして自説などを発表することが容易にできるということがあげられる。実際今日では、このようにして発信された情報は膨大な量に達して日々ネットワーク上を行きかう状況となっている。

 一方、インターネットの世界では、情報を受信する側においても、これまでとは異なる方法が用いられる。人々は、例えば既存のマスメディアから発信される情報を、他者によって選択されたものという認識をもたずにそのまま受け入れる傾向があった。これに対してインターネットの利用者は、理論的には望むだけの情報を収集し、その中から必要なものを主体的に選択できる。

 インターネットはまた、既存の人間関係に縛られることなく自由に意見交換を行う道具としても優れている。社会的立場や利害関係にとらわれることなく、誰もが自由に参加できる、対話や討論の開かれた場を作るのにインターネットはむいている。しかも発信されたネットワーク上の情報は、国境を越え、文化や民族の違いなどの制約を乗り越えて相互に行きかうので、議論の場はグローバルな規模で拡大する可能性をもっている。

 ネットワーク上には年々豊富な情報が蓄積されている。誰もがいつでもどこからでもこれらの情報を引き出し、世界中の社会・政治・経済問題に関する他者の考え方を知り、それに基づいて自ら意見を形成し発信することが可能となった。そうした機会が増大することにより、志を同じくする人たちが実は多数存在するということが認識され、人々の間の横のつながりの形成を促がす要因になったという側面は見落とすことができない。インターネットを通じた横のつながりの形成は、例えば、今日におけるボランティア活動、さらにはNGOやNPO活動の発展に貢献している。

 インターネットにより情報の受信と発信の機会が増大することによって、人々が共有する問題やそれに対する見解をめぐり、率直な議論が引き起こされることが期待できる。インターネットは、公共的な議論の場の形成やその拡大に大いに寄与するであろう。こうした世論の広がりとともに、公共的な議論の質も変容していく。

 しかしながら、インターネットが持つ大きな潜在的可能性は、人間と人間の関係、人間と社会の関係を望ましい方向に導くことになるのであろうか。これにはさまざまな課題が残されているのも事実である。

  

問 インターネットを介した交流の特色の1つに匿名性がある。これは、既存の人間関係を越えて自由な意見交換を促す役割を持っている。その反面、匿名性によって問題が引き起こされていることも事実である。どのような問題が存在するか、インターネットがもつ匿名性の長所に言及しながら、具体的な例を用いて600字以内で述べなさい。

指導記録87

<1月3日(木)>   人生の選択肢


後輩の年賀状に「三菱電気」を退職しました。と書いてあったので驚いて電話をした。「転勤を受諾しないと平社員と同じ条件にする」ということらしい。
言ってみれば「遠廻しのリストラ宣告」だ。
受験生の中にも親の仕事の関係で転校、転校を繰り返して来た生徒もいるかも知れない。
転勤を繰り返すとせっかく今まで出来た人間関係がまた「ゼロ」からのスタートになる。あるいは、親が年老いてボケ始めたり、介護が必要になって来ると「故郷に帰りたくなる」「帰らねばならない」とか考えるようになる時がいつか来ると思う。
受験生時代というのは、ある意味「親から完全保護された状態から自分で先のことを考えさせられる、考えなければならない第1段階」と言えるだろう。
「ぼくは3度のご飯よりこれをやっている方が幸せ!」とか決まっている生徒は幸福だろう。
理由は「心に全く迷いがない」からだ。
最も苦しいのは「自分がどの進路に行ったらわからない」「どうしたらいいのかわからない」とか
常に悩んでいる生徒だと思う。大体位でも自分が何の仕事が好きとかかわかっていたらいい。
しかし、全くどうしたらいいのかわからない生徒だっている。これは精神的に相当苦しいだろう。
ただ、もがいているうちに打開策が出るかもしれない。
最悪なのは直面することを避けていて「問題を先送りにしている場合」だ。
例えば、開業医の父兄であれば、「跡継ぎ」がいなければ、「病院を売る」か「序々にゆっくり閉
める」方向へ動くだろう。診療所であってもある意味「公共の施設」と言える。
建物を「壊す」あるいは「解体する」のだって大変だ。地域の患者だって困る。
家族全員がお世話になっている家も少なくないからだ。
この建物を守るための「責任感とプレッシャー」に18や19で耐えるのも大変である。
「自分の代で潰しては先祖に申し訳ない」という場合もあれば、「俺が裸一貫で開業のための
莫大な借金を銀行が貸すわけない。まして俺の腕で客がつくわけない。それをじいちゃん、
親父が全部準備してくれた。俺はやるで!」と圧倒的に前向きな場合もある。
または、「親父が忙しくて家族旅行さえも1回もしたことがない。他の家族旅行している家がうらやましかった。俺はそんな生活嫌や!」とかもある。または、中学生で女の子なのに「救急医療しかいかない。そこにしか意義を見出せない」なんてとてつもなく志の高い場合もある。
最終的にどの職業にもそれなりの苦労はある。
ベンチャー企業を起こして金銭的に大成功しても奥さん、子供は全て逃げてしまって誰も家にいないなんてのも多い。家庭が崩壊する引き換えに富を得たという場合も多い。
銀行員でとてつもない熾烈な出世競争に疲れ果てる場合だってあるし、苦労して弁護士の資格を取ってもお客さんがつかず全然元が取れない場合だってある。
その第一段階の将来の自分を決める試験が今月から開始する。迷っていようがどうであろうが
試験は開始される。全国の受験生はがんばって欲しい。