指導記録90

<1月6日()>   高校の知りぬぐい(受験生の保護者へ)


受験が近いので日曜日も書く。「100号まで行く」と宣言した限り、絶対に達成する。最初から
読んでいる人は「あ〜忙しくなってきたんだな」と思ってくれれば良い。今日は全国の受験生
を持つ保護者を対象に書こうと思う。現在、必死で追い込みをかけている受験生を冷静な目
で見て欲しい。例えば、最高峰の医学部受験生といえども最初は高校でやるべきことの2割
位しか定着していない状態から始める場合もあるのである。昨日、物理の先生が「高校行くの
無駄ですよ。どこまで抜けてるんやと思いますよ。
なんで一週間にこれだけの時間があってなんで3年間もあってこんだけしか定着してないんですか?」と


予備校に与えられた期間は実質9ヶ月である。正直に言えば、高校の3年分の責任を
9ヶ月でやれ!と押し付けられているのである。(まず、ここを完全に理解して欲しい)
(そんな「間抜けな高校」があるからこそ塾とかがあるんやろ。だからいいんや!という声もあるが、今日は中立の立場で書こう。完全にこれもお客さんが気がついてない所だからわからせる
必要もあると思う。)よく考えて欲しい。


予備校や塾が9ヶ月で終了できることを、高校には365日×3の猶予があるんですよ
でもそのこちらから見れば十分長すぎる期間で2割位しか定着していない生徒がたくさんいるんですよ。そこそこの進学高校の生徒でも驚くほど定着していないんですよ。
大体、私立高校の売りである「学校以外に塾に行く必要はありません」とか言いながら、夏位から学校を脱走して来る生徒だっているんですよね。


だから、高校の先生がもっと研究して腕を磨いてやるべきことをしっかりやれば、塾や予備校なんて必要ないんですよ。保護者も更にお金がかかる必要もないんですよ。しかし、正直な所、今の高校の内容の定着度の悪さは現場の人間から見てひどすぎるんですよね。

間に合わないですよ。


学校現場には色々と受験指導以外の部分もあり、大変なことはわかりますので、以下は
適当に流している先生に向けて書いたものと理解してくださいませ。


<原因>
1、高校の指導が全く的を外している。

2、競争原理が働いていない。

3、教室内にモチベーションが起こっていない。
(生徒のやる気ゼロだからただ時間だけが過ぎている)

4、いくらでも手を抜こうと思えば手を抜ける

5、視野が狭い

6、研究をしていない(自分のわかるテキストだけを利用している。予習をしなくて済むからだ
  と思う。やったことのある問題なら覚えているし、予習の時間を他の仕事に廻せるからだ
  と思う。「楽を覚えるとどんどん手を抜いていく」ようになるし、当たり前になってくる。)

7、生徒が学校を脱走するということは「ここにおっても時間の無駄」と生徒に見切られている。

8、強制補習の内容が最悪(保護者はわからないだろうが、全く意味がない。見る人が見れば
  わかる。本番で点が取れるとは思えない。
  学校の先生の配布プリントを見ればすぐわかる。ただ強制的に収容されているだけだから
  貴重な時間の無駄であり、生徒が逃げるのも無理はないと思う。)

9、中間、期末テストと入試本番の距離が遠すぎる。

10、面接、小論文指導においては何もやっていない。やり方さえもわかっていない。

11、諦めているのか「お前、俺はわからんから予備校行け」と放棄している先生もいる。

12、高校現場の意識が低いので「どうやって欠点を出さないか?」の方に努力をする。

 

私も中高一貫進学高校で指導したからわかるんですけど、「自分の視野が内向き、内向きに
なるんですよ。自分の高校の生徒だけが基準に見えるんですよ。怖くなりますよ。自分の高校
の中の先生と競争しても地区大会は勝てても全国大会では予選落ちするんですよ。

 

何十年も同じ学校で同じ人間といたら、外部の変化ってわからなくなるんですよね。鈍感になる
んですよ。
そして保護者も学校でやってる内容がいいか悪いかまでわかんないんですよ。
たぶん「進路のバリエーション」が多いから手が廻ってないと思うんですよね。
だから民間の塾とか予備校に簡単に負けるんですよ。本来、同じ人間だし、同じことをやればお金と時間と労力をかけてまで行く必要ないですしね。
お客が別の所に動くということは「ひどい」ということ以外に考えられないんですよ。


あるいは、もっと金銭的負担は軽減されると思うんですよ。だって予備校の3倍の時間を与えら
れているんですからね。
でも3年間で定着が「ゼロ」というのがざらにあるんですよ。大変なことですよ。学校は何やってるんですかね。塾や予備校でもう1回学校と同じことをしなくちゃいけないんですよ。本当に時間とお金の無駄なんですよ。」


それと学校の先生に言いたいことは、(他塾の場合も含めて)学校でやっている指導、使用しているプリントや教材、発言等すべて塾や予備校等の民間機関に流れて、吟味されていることを忘れてはいけないと思うんですよ。これは仕方ないですよね。


「こんな教材やプリントこの時期にありえない」とか「学校で板書したノート等」を見れば、「化けの皮」はすぐはがれるんですよね。また、学校の進路指導で言われたことは更に塾や予備校等で「どんな指導しとんねん?」と再びチェックされているんですよ。そこで何も知らなかった父兄が「知恵」を入手して更なる学校不信が造りだされるわけですよね。


ある意味、学校不信というのは「塾や予備校の再チェック」によって造られている所があるんですよ。(だから憎まれる存在なんですね。)
また、モンスターペアレンツが発生しても仕方のない所だってあると思うんですよ。


でも、国立志望の現役生が本番で7割台で止まるのも、そこから慌てて私立対策に走っても完全に間に合わないのも、小論や面接も全てできていなくて願書の志望理由さえ書けずに「単なるパニック」として貴重な一年が終了するのもこれまでに何年も繰り返されている、今だに改善されていない事実なんですよ。毎年同じような失敗を繰り返しているということは、「学習」されていないということなんですよ。あるいは改善する気もない位麻痺しているかだと思うんですよ。更に「推薦出す代わりに生徒が行きたくなくてもここ受けろ」とか最初から難関私立志望専願なのに強制的にぎりぎりまでセンター対策だけやったりしているんですよね。


受験前から「今年はあきらめて来年につなげ」なんて言ったりしてますよね。わかっていると思うんですが、「浪人しても次にうまくいく保証なんて絶対にないんですよ」


日能研理事長、日能研関東会長の小嶋勇会長が「いきざま」という本の中で興味深いことを書
いてますよね。「学校関係者をあ然とさせた究極のアイデアを実行したこともある。
ぬるま湯につかりきった先生方の目を覚まさせようという一種の「ショック療法」のつもりで考え
ついたアイデアだ。日能研関東では、首都圏の私学関係者をお招きして「私学対象講演会」を
定期的に開催している。品川プリンスホテルを会場に全部で202人の先生方にご参加いただ
いた。
この時、私は参加者をそれぞれの学校の偏差値順に座らせたのである。偏差値が低い学校
は、一番前の列、以下順番に席を割り振り、偏差値の高い難関校は一番後ろに座ってもらっ
た。当然ながら会場には戸惑いとどよめきが広がった。前の方に座らせられた先生方は屈辱
的な気持ちになったに違いない。だが、それこそが私の狙いだった。理由は言うまでもないだ
ろう。偏差値の低い学校ほど私の話を聞いてほしかったためだ。偏差値が低いのは、その学
校の努力が足りないからだ。人気がないのはその学校に魅力がないからだ。つまり、偏差値
を上げるには、問題点を改善して魅力を高めればよい。私はそれを訴えるためにこの講演会
を開いた。だからこそ、あえて嫌われることも覚悟のうえで、常識外れ、おきて破りの着席順に
したのである。


講演の冒頭でさらに一発かました。参加者の中に普段着のままバスケットシューズ履きでやっ
て来た先生を見つけ、「人の話を聞きに来るのに何だ、その格好は!あなた方は非常識なん
だよ!」と怒鳴りつけたのである。(1)」小嶋会長が言うには「学校の常識は世間の非常識」だ
と。更に小嶋会長の素晴しい意見として次のようなものがある。


「受験勉強について、もう少しだけ話しておくと、「失敗する悔しさ」を経験することも大切だ。
それによって、心の痛みを覚えることができるからである。実際、私は保護者にこう訴えて
いる。「受験する時には、必ず1校は落ちるようにしてください。どこか、いわゆる記念受験
をしてみてもいい。落ちることもまた、子供にとって貴重な体験になるのですから。この受験
で受かる喜びと、落ちる苦しさの両方を必ず体験させてください。」と


「かく言う私も五十数年前、中学受験で失敗している。私も某私立中学に入学した口だが、
第一希望の学校はものの見事に落ちた。だからこそ言えるのだ。決して負け惜しみで言って
いるのではない。なぜ落ちたか、答えは簡単だ。自分より努力した者が合格し、努力が不足
していた者が不合格になる。


ライバルに負けた悔しさ、応援してくれた両親や先生に対する申し訳なさ、そして何よりも
自分自身の不甲斐なさへの怒り、情けない思い--あの時に味わった諸々の感情は、間違い
なくその後の私の人生に役立っている。心の痛みを知ることで、他人を思いやる感情も育って
くる。周囲の人間への思いやりや感謝の気持ちも、より強く感じるようになる。それがいつか
自分に戻ってくることも失敗した経験を通じてわかるようになるのである。人は自分一人では
生きていけない。親、友人、兄弟、妻や子供たち、そうした人々の支えと協力があって初めて
自分の自分の人生が成り立つことを、決して忘れてはならない。(2)」
「外の世界を知らない小さな権力者」たくさんいますよね。


今年は「高校の尻ぬぐい」が異常に多かったのでぜひとも報告したいと思う。

少し、感情的になりましたが「未熟な人間だからこそたまには感情的になる」と思ってください。


「もう少し、早く来てたら」が多いと責任転嫁したくなりますのでご理解ください。
 

(1)参考文献:「いきざま」P204〜205日能研理事長 小嶋勇著 高嶋健夫編 
  日経BP2007
(2)参考文献:「いきざま」P250〜251日能研理事長 小嶋勇著 高嶋健夫編 
  日経BP2007